大槻義彦さんの『江原スピリチュアルの大嘘を暴く』(鉄人社)を読んだ。
科学者が書く本は、とかく難しいイメージがあるが、大槻義彦さんの文章は、そこぶる読みやすい。テレビでしゃべっているのと、ほぼ同じ。難しい用語はあまり出てこない。あの愚痴っぽいオカルト批判も健在で、そのまんまである。
『江原スピリチュアルの大嘘を暴く』(鉄人社)
オカルト批判とは、理屈ではなく、世界観なのだ。「幽霊なんていない」というのは、科学的に幽霊が存在しないという意味以前に、その人が世界を認識するときに、どんな立場からモノを観ているのかということが、まず先にある。
この前提の世界観が壊れていると、大槻さんがこの著書で批判している東大の茂木健一郎氏のように、優れた頭脳と知見がありながらオカルトを受け入れてしまうという恥をさらすことになる。
そう言う意味で、科学は実に主観的なものだ。
よく、科学=客観、文学・芸術・宗教=主観、と思ってしまいがちだが、どんな科学者でも、自分の研究対象に対して、自分の主観をフルに発揮して仮説を立てる。仮説が正しいかどうかは、「実験」を通じて検証し、証明される。科学が科学になるのは、証明された瞬間だ。
だから、意志の弱い科学者が入り口で失敗すると、オカルトに走る。
現代の科学は、とかく目に見えないものを対象としている。
大槻さんがこの本でも書いているように、理系が目に見えるものを信じ、文系が目に見えないものを信じるなんて、林真理子の意味不明な人間観など、現代の科学とは相容れない。
むしろ、文系が目に見える人間を相手にしているのに、理系は相手が自分の目では見えないものと戦う場面のほうが多い。
例えば、原子や分子、何億光年も遠い銀河、宇宙に漂う暗黒物質、ブラックホール・・・みんな肉眼では確認できないが、存在が証明されている。
林真理子は、単に理系人間が嫌いなだけだ。
優秀な科学者ほど、オカルトに走りやすい。これは、このブログでも何回か述べてきた。
ジャーナリストもしかり。
オイラが、秋庭本をしつこいほど批判しているのは、地下網があるかないかという実証以前に、世界観がそうさせている。逆に、秋庭俊先生がいつまでもオカルトを脱しきれないのは、彼のジャーナリストとしての能力以前に、彼がどの立場から世界を認識しようとしているのかという世界観に規定されている。
大槻さんが、優秀な科学者かどうかは、オイラには分からない。そもそも、オイラがそれを判断できるほど、優秀な脳みそを持っていない。
ただ、世界観に共感しているだけだ。
江原啓之なんて、とっくの昔に化けの皮がはがれている。
ほとんどの人は、彼のいたこまがいのパフォーマンスが、「ネタ」だと分かっているはずだ。だが、それでも、霊感商法や「スピリチュアル・カウンセリング」なるものにだまされて、大金をむしり取られる人が後を絶たないのは、彼の「ネタ」は確実に視聴者に「前世は存在する」「死後の世界はある」というイメージを植え付ける役割があったということだ。
オカルトとは、根の深いものだ。
最初に述べたように、科学と反科学との境界線は、検証の対象となる事物の客観性・主観性にあるのではなく、対象を見つめるその人自身の世界観に関わっているからだ。
今回紹介するこの本がすべて正しいと判断することはできない。
例えば、男性が江原スピリチュアルを信じないのは、「常識的で倫理的だからだ」というのは、首を傾げる。
江原スピリチュアルを信じている人に女性が多いのは事実だ。
これは、男性と女性とでは、社会的な生活環境に違いがあるからだと思う。
女性の社会進出が進んだとはいえ、やはり現代社会は男社会だ。主婦はいても、主夫はなかなかいない。男が持つ夢を、女が実現できるかといえば、まだまだ女性の社会的地位が男性と対等になったかどうかは疑問がある。
ゆえに、社会でぶち当たる壁が違っている。
オイラは女性の味方をするつもりはないが、男性が「世の中は暗い」と思っている以上に、女性の「世の中は暗い」は、もっと暗いのだと思う。
江原は、人の弱みにつけ込む。「カウンセリング」という名の下に、弱点をついて、いたこまがいのパフォーマンスに説得力を持たせる。
女性のほうが、ネタにしやすい、ということだと思う。
じゃあ、男はオカルトに強いのかというと、アホみたいに幽霊を怖がる男はたくさんいる。でも、プライドばっかり馬鹿でかいから、外に見せないだけだ。
その証拠に、秋庭本のファンは、圧倒的に男性が多い。
・・・いや、これは、オイラの思い込みかな(笑)
残念ながら、出版界は、オカルト礼賛である。大手出版社は、江原批判などできない。秋庭本を垂れ流すのと同じだ。
だから、今回の大槻さんの江原批判本は、勇気をくれた。
若い世代が、こういう本を書くべきだと思う。
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