« 【秋庭系東京地下物語'07《初恋》】(第5話)「GHQが作成した地図」に惚れた恋・その4 | トップページ | 『ハチミツとクローバー』 »

2008年1月 2日 (水)

【秋庭系東京地下物語'07《初恋》】(最終話)東京の地下鉄は戦前にすでに作られていたという噂は本当か?

年またぎで「GHQの地図」に迫ってきたが、結局のところ、

東京の地下鉄は戦前にすでに作られていたという噂は本当か?

オイラの検証は、最終的にはここに行き着くことになる。

地下のオカルト作家・秋庭俊先生は、自称ジャーナリストである。彼の本を読む人は、まず前提として彼が主張する内容をジャーナリズムの1つとして捉えようとするし、仮にエンターテイメントの1つ、オカルトの1つとして捉える人も、どこかで「すべてが間違っているわけではない」と思っていたりするだろう。

夢やロマンで地下の陰謀を語るなら、それはそれで良いのだと思う。

でも、ほんのひとかけらでも秋庭先生のジャーナリズムに真実が隠されていると思っているとしたら、大変不幸なことだ。

オイラなりに考えてみたい。

東京の地下鉄は戦前に作られたのか?

結論から言うと、

戦前に作られた地下鉄は、銀座線ただ1つである。

終戦直前に現在の丸ノ内線の前身の地下鉄路線のうち赤坂見附附近を中心に一部分工事に着手されているが、設計が終了しただけで、実際の工事はほとんど行われていない。もちろんトンネルも構築されなかった。

ただし、戦前に設計された図面は、戦後に営団が丸ノ内線を建設する際に利用されている。これは、秋庭先生が自著でも示した通り、『丸ノ内線建設史』に掲載された図面で分かる。

いくつかの疑問に答えてみよう。

Q 秋庭本はデタラメばかり書いているが、真実も隠されているのではないか?

A 逆だと思う。秋庭先生自体は、下手な鉄砲数撃ちゃ当たる的に当てずっぽうに「地下の秘密」を暴露してみたが、1つも擦らなかったというのが結末だろう。

世の中にはヤバい話など、たくさんある。オイラは仕事柄、そんな話題に擦りそうになって、慌てて身を伏せることがある。あれって、臭うのだ。独特の。秋庭本には臭いがない。

オイラは、どこかに真実があると思って、最初は秋庭本の検証を始めてみた。ところが、とうとう事実の欠片すら見つからないまま、ここまで来てしまった。本当にヤバいのであれば、二見文庫の謎本でお茶を濁している暇などないはずだ。

よく考えてみてほしい。

デタラメの中に真実が隠されているのが本当だったと仮定して、真実がどれだかさっぱり分からないというのは、真実として成立しているのだろうか。誰にも認識できないのであれば、やはり地下の秘密は、国民に隠されたままなのではないだろうか。ずいぶんもったいない出版物だと思う。

Q 秋庭俊先生が極秘情報を暴露しても抹殺されないのは、泳がせているからではないか?

A いわゆる左翼ゲリラというのは、警察に泳がされていたというのはよく聞く話だ。秋庭先生も、もしかして地下の秘密がデタラメだと思わせるためにわざわざ泳がせて、印象操作しているのではないか。

第1に、ジャーナリスト1人くらい、抹殺したければ抹殺すればいいだけだ。海に沈めれば、そのうち大衆は秋庭俊なんて忘れる。仮に誰かが秋庭俊の遺志を受けて、「隠された地下網」に挑もうとする。でも、どうだろうか?彼はやっぱり秋庭先生の示した資料が図書館で見つかることに気づき、歴史上の人物の人格を捏造していることに唖然とする。

泳がせなくても、地下の秘密はデタラメだという結論しか導き出せないんじゃないかな。

第2に、別に抹殺する必要なんてなくて、出版社などに圧力をかけて出版界から出入り禁止にしてしまえば、秋庭先生は活動の場所を奪われることになる。でも、圧力をかけたとして、秋庭先生の本は書店から消え、大衆はやはり、「ああ、デタラメだったんだな」と静かに納得してしまうだろう。その後、別のジャーナリストが秋庭本の続編を書こうと、秋庭本を検証してみるが、結論は最初と同じだ。

どう?

泳がせる必要ってある?

Q 秋庭本はすべてデタラメだが、「隠された地下網」は存在するのではないか?

A 秋庭先生が主張しているのは、「地下鉄網」なので、秋庭本を100%否定したとしても、「隠された地下網」を否定することにはならない。・・・それは論理としては成立するが、「隠された地下網」があることを証明することすらしないで、ないことを証明はできない。

ないものをないと証明することほど難しい作業はない。

少なくとも秋庭先生は、デタラメではあったが、彼なりに「隠された地下鉄網」を証明しようとして見せた。その点では、一歩前に出ている。「隠された地下網」をただの1つも証明しようとしないで、「秋庭本は否定できるが、『隠された地下網』は否定できない」と強弁するのは、秋庭先生以下である。

オイラは、世の中に国民には伏せられた地下構造物があると思っている。

旧首相官邸の地下道は、出口が封鎖された後も何十年も、埋められずに残されていた。これは『首相官邸・今昔物語』で明らかにされている。

開発をするときに必ず行う遺跡の調査。でも、縄文時代とか江戸時代の遺構が発見されることはあっても、明治、大正、昭和の遺跡が見つかったというのを聞いたことがあるだろうか。江戸時代の地層まで掘り進むまでに、必ず昭和・大正・明治の地層も掘ることになるはずだ。例えば不発弾が埋まっていれば、大事になる。でも、ただのトンネルだったらどうだろうか。

そんなの気にもしないでつぶしてしまうだろう。

仮に「何だこれ?」と見つけて、戦時中の地下壕だとしても、それを残さなければならないという約束事は存在しない。まして土地のディベロッパーにとって妙な地下構造物は売買のジャマにしかならない。大穴が開いていれば、埋め戻さねばならない。極端にデカい穴なら、埋め戻すのが難しく、次の開発の「形」に影響してくる。

東京の地下には、数々の遺構が残っていたはずだ。それが「東京再生」の名の下に次々と埋め潰されてきた。

だが、それは「隠された地下網」と呼べるものではなかったように思える。

オイラも所詮、秋庭先生以下である。あるものをあると証明できないうちは。

が、断言しておきたい。

地下鉄も都電も、「極秘」と冠をつける必要のあるものは、戦前なかった。

さて、年末年始とまたいできたこの企画も、今回が最後。2008年は同じタイトルで書くことはないと思う。

秋庭本いぢりも、すでに2年。いい加減ネタがなくなってきたのが正直なところだ。

もっと細かいところにツッコミを入れることはいくらでもできるが、だんだんあほらしくなる。

いつだったか、秋庭本検証は、タマネギの皮むきだと言った。

皮を剥いても剥いても、皮しかないからだ。

秋庭本から学ぶものは、何もない。

それでも皮を剥き続ける。

少なくとも彼が「ジャーナリスト」と自称し続けるうちは、やめるわけにはいかないのだろうと思っている。

オイラがブログの更新をさぼっている間も、アクセス数はほとんど変わることはなかった。ブログの本来の価値は、更新が途絶えた後に証明されると思っている。

だから、ブログはおもしろい。

そう思えるうちは、秋庭本いぢりをやめられそうもない。

(おわり)

秋庭系東京地下物語'07《初恋》

第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話

延長戦1 延長戦2 延長戦3 延長戦4

 

|

« 【秋庭系東京地下物語'07《初恋》】(第5話)「GHQが作成した地図」に惚れた恋・その4 | トップページ | 『ハチミツとクローバー』 »

秋庭系東京地下物語2007」カテゴリの記事

コメント

専門趣味誌がこの体たらくですから、秋庭ワールドを笑えない。
  (115)東京地下鉄銀座線
   日本最初の地下鉄として1927年以来の歴史を持つ.渋谷
   から浅草まで地下区間ながらその歴史を偲ぶ施設が多い.
   東京高速鉄道の新橋駅ホーム,神田―末広町間の神田川
   底のシールドトンネル,万世橋仮駅跡など暗い車窓にもかか
   わらず実見でき,発見も多い.
                               (大池真一)
   「鉄道風景&名所800」鉄道ピクトリアル2008年2月号36頁
 実地に見ない、資料を確認しない。伝えるべきことより与えられた字数が少ないと言う制約はあっても、嘘を書いてはいけないと思うのだが。

投稿: 陸壱玖 | 2008年1月 4日 (金) 11時02分

どうもです。

見られるもんなら見てみろって感じですが、さすがに「分岐」は見えなかったようですね(笑)

投稿: mori-chi | 2008年1月 4日 (金) 18時10分

イエイエッ。安心はできません(笑

>暗い車窓にもかかわらず実見でき,発見も多い.

色々発見できる様ですので(爆

   沿線風景が魅力の路線・区間
   (087)東京地下鉄丸ノ内線茗荷谷―後楽園間
    山手線の内側で地下鉄が地上区間を相当距離走るという
   点が特徴.第三軌条方式なので架線がなく、すっきりした
   車窓風景が眺められる.どこかのんびりした雰囲気のする
   沿線が好ましい.                (大池真一)
 「鉄道風景&名所800」鉄道ピクトリアル2008年2月号34頁

 多少汚名返上?さすがに、「ついたて」何ぞと言う記述は無い。
 しかし、いくら風景と言う個々の感性によるものとは言え、あの区間について上記の様な具体性の無い印象を一般化されるのもなあ。

投稿: 陸壱玖 | 2008年1月 4日 (金) 22時30分

彼にいったい何が見えたんでしょうね(笑)殺風景な壁だったとしても、彼にとっては「架線がない」のがツボだったのかもしれません(^_^;)

丸の内線がのんびりしていると思っているところを見ると、サラリーマンやったことないんですね、きっと。

投稿: mori-chi | 2008年1月 5日 (土) 08時40分

投稿: d | 2009年11月22日 (日) 16時47分

ご無沙汰です。
一寸教えてください。
宝島がコンビニ本で「要塞都市・東京の真実」を出したんですよ。Mookから大分弄ってるみたいですが。
定価600円で、中身相変わらずなんで滑稽本として読むならMookよりお買い得なのかな?
一つ気になるのが「地下のこと」じゃなくて、冒頭の「核兵器テロが東京で起きたらどうなる?」と言う記事で、広島か長崎のABCCの資料の、どこか(朝日グラフ辺りかな)のコピーだと思うのですが、治療中の女性の写真をマスクも無しに掲載(例によって複写元の表記無し)してるんですよ。60年以上前の写真ですが、これって問題ないんでしょうか。

投稿: 陸壱玖 | 2009年12月13日 (日) 01時32分

おはようございます。

実物見てからコメント入れようと思ったら、なかなか手に入らないで遅れましたm(_ _)m

で、結局、実物を見ていないのですが、よくありますよね、一般的な書籍でその手の戦争関係の写真。マスク処理しているものは見たことないような。あれは、どう許諾の手続きをしているのか、それとも、報道写真だから許諾いらないみたいな屁理屈なのか。

オイラが許せないのは、そーゆーオカルト本に、面白半分な演出で、被爆者をのっけるなということです。

投稿: mori-chi | 2009年12月19日 (土) 06時24分

お手間取らせました。
同感です、無意味に載せてる点アカンやろと思っています。
この本、写真資料や図表については殆ど出典を表示してないけしからん本なんですよ。巻末の参考資料欄に写真資料提供産経新聞社とあるだけなんですな。
相変わらず本編の軍事資料はダメダメだし、表立って秋庭さんの名はないんですが、地下とか、都心部の交通機関についての与太は秋庭臭紛々。
焼き直しでも結構笑えますので、コンビニお寄りの節はご一覧を。私はローソンで発見しましたが。

投稿: 陸壱玖 | 2009年12月19日 (土) 11時37分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/109926/17558965

この記事へのトラックバック一覧です: 【秋庭系東京地下物語'07《初恋》】(最終話)東京の地下鉄は戦前にすでに作られていたという噂は本当か?:

« 【秋庭系東京地下物語'07《初恋》】(第5話)「GHQが作成した地図」に惚れた恋・その4 | トップページ | 『ハチミツとクローバー』 »