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2007年12月31日 (月)

【秋庭系東京地下物語'07《初恋》】(第2話)「GHQが作成した地図」に惚れた恋・その1

オイラは、秋庭俊先生のことを「地下のオカルト作家」というレッテル張りしている。ここまでの認識に到達するには、いくつかの壁があった。

秋庭俊先生は、確信犯か否か。

言っていることが荒唐無稽であることは、前回の例を読んでいただければ分かるだろう。でも信者からすれば、それでも荒唐無稽な諸説の中にひとかけらでも真実があるのではないかという望みを残しているのではないだろうか。

秋庭先生の著作に、何となく信憑性のようなものを与えているネタがある。

それは、「GHQの地図」。

某有名作家がへんてこりんな体験談をネットに載せたものだから、ますますGHQというと、いかにも何かを隠しているように思えてくる。

君は知らないだけだよ。

そう言われると、そうかもしれないと思ってしまうのだ。

しかも、GHQ・連合軍最高司令官総司令部である。いくらネットが発達した世の中でも、そんな極秘資料なんぞに手が届くはずがない。・・・『隠された地下網の秘密』を手にしたときオイラはすでに「信者」という鎖を断ち切った後だったが、こればかりは自分では解明できないものとばかり思っていた。

が、オイラは、そのすべてに迫ることはできなかったが、秋庭先生の言うところの「GHQの地図」が何たるかは、ようやく分かってきたような気がする。

秋庭先生の著書の中には国立公文書館や都立公文書館がよく登場する。だが、今年1年検証してきたように、公文書館がなければ手に入らない資料など、ほとんどない。

隠された地下網の秘密を示した資料は、ほとんどが都立中央図書館東京室と国立国会図書館で入手可能なものである。

特に都立中央図書館東京室は、おそらく、かなり通いこんだと見られる。

もしも検証を試みたい方がいらっしゃるなら、都立中央図書館東京室で『東京市会議事速記録』を閲覧してみてはいかがだろうか。

1つ1つの資料を紐解いて、都立中央図書館では手に入らなかったのが、中村順平『東京の都市計画を如何にすべき乎』と、GHQの地図である。

『東京の都市計画を如何にすべき乎』は、国立国会図書館で閲覧することができた。後に東大の図書館や神戸市立図書館でも閲覧可能であると知った。

【秋庭俊先生応援企画】『帝都東京・隠された地下網の秘密』がトンデモ本って、マジっすか?5

では、GHQの地図は?

国立国会図書館には占領軍関連の資料がそろっているが、その中に秋庭先生が著作で紹介している地図は見つからなかった。

いったい秋庭先生は、どこでその地図を入手したのか?

こればっかりは、米国の公文書館なのではないか。

そんなことを考えながら『隠された地下網』を読み返していた。

すると。

戦後五十年を過ぎた頃から、アメリカでは極秘資料の期限が次々に切れ、いま、占領関係の情報が公開ラッシュを迎えている。これはそのなかの新着の一枚であり、国会図書館でも、まだ、閲覧できないかもしれない。(『帝都東京・隠された地下網の秘密』新潮文庫、P28)

国会図書館?

何故秋庭先生はここでわざわざ国会図書館を出したのだろうか。

まるで秋庭先生の示す資料が国会図書館の所蔵であるかのような書きっぷりだ。読者は秋庭先生の著作を、一応「ジャーナリズム」として受け入れようとする。ジャーナリストなら取材の裏付けを積み重ねて真実にたどり着こうとするはずだ。それがまさか、図書館で閲覧して原稿を書いているなんて、読者は最初から想定していない。

犯人しか知り得ない事実

聞いてもいないのに、犯人が「私は殺人現場にはいなかったですよ」と口走る。

オイラはこれまでの流れを振り返ってみた。引きこもりオカルト作家・秋庭先生は、公文書館でしか手に入らない資料など、まったく使っていなかった。図書館の資料を巧みに盗用し、仮説を捏造しているだけだった。

GHQの地図だけが例外のわけがない。

オイラはそう思いながらも、そこから先への手がかりを探れぬままに2007年の年末を迎えようとしていたのだ。

もしかしてこれは、国会図書館にある、ということではないだろうか。

国立国会図書館憲政資料室

確かに国立国会図書館の憲政資料室には、占領期資料がある。ただ、この資料を検索しても、それらしい資料は見つからなかった。これらの資料を閲覧するにはそれなりの学術研究をしている必要があり、ただ見たいだけで閲覧できる資料ではない。

引きこもり作家が、そんな面倒なことをするだろうか。

オイラは、国会図書館の地図室の蔵書検索をしてみた。

“AMS L774”

案の定、ヒットした。しかも、たくさん。

さらに絞り込んでみる。

“AMS L774 tokyo”

数件ヒットした。

・・・実物をお見せする前にちょっと前提の話をしておこう。

AMSというのは、U.S. Army Map Serviceの略称。つまり旧米国陸軍地図局である。

国立国会図書館は、AMSが作成した地図のシリーズを収集している。

この中に、秋庭先生が自著で使用しているL774とL874というシリーズがあるのだ。

シリーズというのは、地図の性格や縮尺が違うと思えばいい。

L874は、日本の主要都市の地図で、すべて25000分の1である。

L774は、日本全体の地図で、すべて50000分の1である。

1つ指摘しておくと、これはGHQが作成したものでもなければ、GHQが作成を指示したものでもない。

旧米国陸軍地図局は、世界中の様々な地図を作成している。L874やL774もその中の1シリーズにすぎない。つまりアメリカが日本の地図を作成した、という以上でも以下でもない。

国立国会図書館の地図室には、旧米陸軍地図局が作成した一連のシリーズで、同図書館が所蔵している地図をまとめたファイルがあって、一覧表になっている。検索してももちろん見つかるのだが、まずはここで全体像をつかむといいだろう。

『帝都東京・隠された地下網の秘密』(新潮文庫)の最後にある「参考文献一覧」をご覧いただきたい。

『TOKYO MAP』「CITYMAP TOKYO」GHQ 一九四八
  同    「AMS-L774」一九五二
  同    「AMS-L874」一九五三

いかがだろうか。何かに気づかないだろうか。「GHQ」が著者とされているのは一番上の地図だけだ。にもかかわらず3つとも『TOKYO MAP』という冠がついている。何故秋庭先生は、下の2つの地図の著者を「旧米国陸軍地図局」と書かなかったのだろうか。

そもそも、AMSの地図に『TOKYO MAP』という冠はついているのだろうか。

まるで3つの地図が同じシリーズであるかのような書き方をしているが、一番上の地図と下の2つの地図では、著作者が異なっている。前者はGHQ、後者は旧米陸軍地図局である。

一番上の地図は、タイトルがまるごと間違っている。秋庭先生が自著で使っているGHQの地図のタイトルは、

CITY MAP CENTRAL TOKYO

である。

つまり、すでにこの段階で3つの「GHQの地図」は、著作権的には違法状態にあるということを指摘しておきたい。

(つづく)

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