秋庭俊先生渾身のオカルト小説『大東京の地下鉄道99の謎』(二見文庫)を読む・その4
今日、東京メトロ千代田線で電車が車掌を置き忘れたまま発車してしまったそうだ。車掌抜きで発車した電車はある意味「ワンマン運転」だが、運転士はいったいどこでそれに気づいたのだろうか。
それよりオイラは、置いて行かれると気づいた車掌が全力疾走で電車を追いかける姿を想像して、思わず笑ってしまった。
いやはや、戦前からあったとしか思えない(意味なし)
PART5 東京メトロ「東西線」「千代田線」「都営三田線」の地下の謎
57 〈高田馬場駅〉駅のトンネルの上に「街路」=地下道新設の不思議
秋庭流のトリックが行われている。東西線が建設された当時の設計図にある点線の「都市計画街路」と、現代の都議会での「駅舎及びトンネルの躯体等インフラ部」という言葉を根拠もなく結びつけて、同じものというこじつけをしている。前者は場所も非常に明確だが、後者はどこのことなのか、東西線の上か下か、副都心線のどこなのかも書いていない。にもかかわらず秋庭先生は勝手に両者を同じと決めつけている。
前者の東西線の「都市計画街路」は点線なので、計画ということが分かる。しかも東西線の上にあるという理由だけで、東西線より古いという結論を出している。それ自体、秋庭先生が勝手に立てた理論だ。
先にあるトンネルの上に新しいトンネルをつくると、下にあるトンネルが沈むというなら、上を先に造ろうが、下を先に造ろうが、下にあるトンネルは沈む。
言っていること、分かる?
上のトンネルに押されて、下のトンネルが沈む。これは、上を先に造ろうが、下を先に造ろうが同じ。何かが上にあれば、その下のものは沈む。先に上があって下に何かを構築すると、上の重みで下のものが沈む。逆に先に下があって上に何かを構築すると、やはり上の重みで下のものが沈む。
つまり、沈まない対策を取らなければ、上が先だろうが下が先だろうが、下のものは沈む。
ところで、国の直轄事業には、東京都は出資する。ていうか、国の直轄事業に地方自治体が出資するのは常識中の常識で、今地方分権の論議の中で最も問題視されている公共事業の弊害である。
駅舎やトンネルなど、地下鉄に関連するものは国が建設するが、インフラ部は東京都が「道路の一部」=「街路」として整備するらしい。(P134)
読解がめちゃくちゃ。原文を読んでみよう。
「駅舎及びトンネルの躯体等インフラ部を道路の一部として、国の補助を受け、道路管理者である東京都が整備するものでございます」
これのどこを読んでも、「地下鉄に関連するものは国が建設する」とは書いていない。国はただ補助をするだけである。もちろんここには「街路」も登場しない。都は、「駅舎及びトンネルの躯体等インフラ部」を整備すると書いている。それは、国の補助を受け、道路の一部として整備すると書いている。
何故「道路の一部」になるのか?それは、道路特定財源を投入するから。
道路特定財源は、道路だけに使われない。小泉首相の時代に一般財源化・・・つまり用途を限定せずに使えるようにしようという議論もあったが、実現しなかった。そのかわり様々な道路関係の用途に対象が拡大されている。地下鉄を建設すると地上の道路もいっしょに整備することになるので、「道路の一部」ということになる。
58 〈神楽坂駅〉勾配ゼロのトンネルと奇妙な2段重ね構造の駅の謎
地下鉄のトンネルは、通常、地下水がトンネル内に溜まらないように細かく上下している。(P135)
いかにももっともらしい一文である。が、何かおかしい。トンネル内に地下水をためないようにするには、トンネルを細かく上下すればいいの?
イメージしてほしい。次の駅に着くまで、細かく上下する・・・。
やっぱり地下水はたまる。っていうか、トンネルを細かく上下させたら、細かい「下」のところに水がたまる。逆効果だ。
トンネルに水がたまらないのは、トンネルに勾配があるからではなく、ポンプで排水しているからだ。
つまり前提が間違っている。
駅に水がたまらないように配慮することならできるだろう。駅のホームの部分を高く設定すればいい。水はトンネルに向かって流れ、ホームの乗客が水に浸かることはなくなる。
しかし、神楽坂駅のトンネルには勾配ゼロ、上下のない個所がいくつかあるのだ。(P135)
文章が破綻している。まずは誤字。「個所」ではなく「箇所」でしょ。
「神楽坂駅のトンネル」とはどこのことなのか。駅の構内のことなのか。もしそうなら、勾配ゼロでもおかしくないでしょ。細かく上下している駅なんて見たことない。駅の前後にあるトンネルのことだろうか。「上下のない箇所がいくつかある」というのは、どことどこのことだろう。
「カーブがいくつかある」・・・これなら分かる。
「坂がいくつかある」・・・これも分かる。
では、「上下のない箇所がいつくかある」・・・イメージ可能だろうか。平坦なトンネルが「いくつか」あるのだ。つまり上下しているトンネルの前後なのか、左右なのか分からないが、複数にわたり平坦な場所があるわけだ。いや、それでは上下している部分があるから、「勾配がない」ってことにはならない。
つまり、何が言いたいか。
この部分は秋庭先生のねつ造である。
59 〈竹橋駅〉東西線が道路を避け、お濠の下を走るのは、なぜ?
お濠の下なら、ガスや上下水道、電気といった埋設物がなくて、工事が楽だからだ。条件さえ整えば、道路は避けたい。
60 〈代々木上原駅〉小田急が千代田線を乗り入れさせた理由とは?
小田急に限らず私鉄の悲願は、都心乗り入れである。だからこそ戦前から私鉄は都心の地下鉄計画を競っていた。いったんは東京市が牛耳ったが、実現には至らなかったが、私鉄も出資した営団が後を継いだ。それも戦後に資本関係が解消され、各私鉄は相互乗り入れというかたちで都心への乗り入れを実現した。
利光がどうだとか、海軍がどうだとかは関係ない。
61 〈代々木公園駅〉代々木公園の下にある車庫が逆向きなのは、なぜ?
したがって、千代田線の車両は代々木上原駅から車庫に入る。これなら逆向きにはならない、というわけだ。(P140)
謎でもなんでもないじゃん。
62 〈国会議事堂駅〉天井の上に、もうひとつの駅が隠れている。
ここにも幽霊がたくさん登場する。
「専門家たちも驚いている」「という話も聞いた」「年配の方からは」
国会議事堂前駅より狭い駅はたくさんある。少なくとも丸ノ内線の国会議事堂駅のホームと比べたら千代田線の同駅ははるかに広い。ひどい駅は狭すぎて「ここでは待たないでください」って注意書きが書いてあるところもある。
ちなみに国会議事堂は山のてっぺんに建っている。従って千代田線は大きな勾配もなく同駅に入るのに、地上からの深さはかなり深いってことになる。
63 〈国会議事堂前駅〉千代田線と丸ノ内線は交差している、いない?
交差していると秋庭先生自身が自著で書いている。
地図は嘘をつく。地図の目的は、現状をありのままに表現することではなく、行きたい場所に行けることだ。従って、道路の広さを偽ったり、記号を省略したり、距離を偽ったりすることが当たり前のように行われている。
64 〈霞ヶ関駅〉ホームから上りの階段やエスカレーターがないのは、なぜ?
地下鉄サリン事件当時、秋庭先生がここで書いたような出来事は起きていない。
65 〈大手町駅〉東京都が許可を取り、営団が線路を敷いた謎
「1−8計画」の目玉は、新住居表示と旧住居表示のトリックである。当初『帝都東京・隠された地下網の秘密2』の中で秋庭先生は、千代田線の工事申請にある「丸の内1−8」が旧住居表示にあったのに、その後「丸の内1−8」が新住居表示に移行してまったく違う場所に移動したにもかかわらず、千代田線の工事申請が「丸の内1−8」のままになっている、つまり営団は旧「丸の内1−8」と、新「丸の内1−8」の両方で工事を行い、後者の工事は極秘地下計画である、ということだった。
ところが、今回の本ではそれらがばっさりと消えた。
なのに「1−8計画」という言葉だけは残っている。謎も何もないのに。そのかわり何故か「有楽町2−2」をオカルトスポットに仕立て上げた。それなら「2−2計画」じゃん。
まあ、どこのブログか知らないが、完全論破されてしまい、電波を弱めたら、今度は書いていることがよく分からなくなったというのがこの記事なんだろう。
ところで、基本的な間違いを。
1969(昭和44)年4月に新住居表示が施行されるまで現在の大手町交差点付近で(P148)
新住居表示の施行は町単位で異なっている。正しい新住居表示への移行は、上記の2つのエントリーに記載している。「丸の内1−8」が新住居表示へ移行したのは、1970(昭和45)年1月1日である。
66 〈新御茶ノ水駅〉千代田線と丸ノ内線が交差している地点は?
これも先ほどと同じく、地図は嘘をつく。
67 〈湯島駅〉不忍池の地下車庫は「横穴式防空壕」を利用した?
だって、池の下だよ。水漏れてくるでしょ。
68 〈綾瀬駅〉霞ヶ関の地裁と東京拘置所を結ぶ地下鉄計画があった?
その通り。あった。ラスト4行を除けば事実である。ただし秋庭先生が取材したのではなく朝日新聞の連載の丸写しである。
69 〈目黒駅〉開業から30数年も経って起点駅に決まった謎
ネット上のウィキペディアから丸写し。楽な商売してるなー。
週末は晴れるらしい。自転車を買って海岸線を疾走したい今日この頃。
秋庭俊先生渾身のオカルト小説『大東京の地下鉄道99の謎』(二見文庫)を読む
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コメント
mori-chiさんは調べ済みでしょうが、一応お手伝い。
58」 東西線建設史の線路縦断面図に拠れば、
A線高田馬場起点3キロ天神町から上り35‰
神楽坂の駅手前で33‰駅構内もも6‰(一寸数字怪しいが)
の上り。
駅出て30‰の下り連続して35‰の下り。
66」 千代田線建設史に拠れば神田川の所。
千代田線は神田川の下、丸ノ内線は神田川の上を渡っている
部分。
67」 地下車庫ってアータッ(笑、中線で一編成分。
だから千代田線本線ごと不忍池下を走っている。
>だって、池の下だよ。水漏れてくるでしょ。
「池の端」だよ。実際工事中「不忍池の土留が一部崩壊」。
投稿: 陸壱玖 | 2007年10月 4日 (木) 22時24分
おはようございます(^.^)
補完ありがとうございますm(__)m実はあまりマジメに調べてはいないのですが勢いで飛ばしています(笑)
次の更新は今夜になる予定です。今夜中に最後まで片付けてすっきりと3連休に突入しようと企んでます。
投稿: mori-chi | 2007年10月 5日 (金) 08時02分
超亀ですが。
前からやろうと思っていて中々機会の無かった、「新しいトンネルが上に出来ても下の古いトンネルが沈まない訳」今回やっと書けましたので、ご参考に供します。
http://www3.atwiki.jp/619metro/pages/113.html
それと、神楽坂駅の勾配も元図では擦れて読めなかったので、計算して出しておきました。
投稿: 陸壱玖 | 2008年6月20日 (金) 05時56分
こんにちは。
粗大ごみまで有料券でお疲れ様です。ちょっと前までは無料だったんですけどねー。昨年の引っ越しのとき、その手数料の高さに驚きました。
副都心線開業前に秋庭先生、1冊来るのかと思ったら、音沙汰なし。
企画通らなかったのかなあ。というか、営業活動の甲斐あって、ここんところ番外編のようにテレビとか媒体にチラ見せしているのかもしれませんが。
投稿: mori-chi | 2008年6月22日 (日) 13時10分