楽園の腐った林檎
オイラの恩師が昔、そんなタイトルの小説を書いた。
箱に詰めた林檎の中に、たった1つ腐った林檎が混ざっているだけで、他の林檎も腐ってしまう。人間も同じじゃないか。
自分は腐った林檎なのか?
離れて暮らす娘を思い、そんな自問自答をする男の物語。
あの頃はピンと来なかったけど、今は何となく主人公の気持ちが分かる気もする。
ここんとこイヤなニュースばかり耳にする。
拉致、監禁、殺人・・・。腐った林檎・・・。
1つ目の事件。
2007年5月9日午前0時20分頃、ペッパーランチ心斎橋店で店員2人が女性客をスタンガンで脅し、睡眠薬を飲ませ、拉致・監禁し、暴行を加える。9日朝に女性は自力で脱出し、事件が発覚。
2つ目の事件。
2007年8月24日夜名古屋市千種区で、帰宅途中のOLが拉致・殺害される。犯人の3人はインターネットサイト「闇の職業安定所」を通じて知り合った。
昔から犯罪は当たり前のように起きているが、最近の犯罪は悪質を通り越して、むしろ無邪気に思えることもある。全国展開しているチェーン店の店長と店員がつるんで客を拉致して暴行を加えるなんて、オイラはシナリオライターの勉強をしていたことがあるけど、ドラマでそんなネタを使ったら、「リアリティがない」と一笑に付される。闇サイトで知り合い殺人を犯すなんて、脳みそがガキでないとできない犯行だ。
でも、多いよね。こーゆー不気味な事件。安物のVシネマのような荒唐無稽な犯行。
日本は楽園だと思う。敗戦の痛手から復活し、護送船団方式で温々と経済成長を果たし、民主主義を謳歌し、民衆は踊り、政治家は太鼓をたたく。いや、逆かな?
そんな平和大国に投げ込まれた“腐った林檎”。
人々は、このはかなき林檎を責め立て、怒りをぶつける。
そしてご丁寧に彼ら犯人たちは弁護人がつけられ、反省猿のごとく「反省」「反省」と口にして、慈悲を請う。
1人殺しては死刑にはならない。殺していないなら、なおさら死刑にはならない。
よって懲役となってもそのうちしゃばに出てくる。
また社会に“林檎”は投げ込まれる。
ふと最近の事件を振り返ってみて、
楽園の腐った林檎
って言葉がよく似合うと思った。
昔の刑事ドラマなんか見ていると極悪非道な犯人は、実は根は優しかったり、人間くさかったり、犯行に及ぶ動機のようなものが1つのドラマのエッセンスになっていた。
変わったのは、『踊る大捜査線』だっただろうか。犯人の人間像にはいっさい触れず、動機は小道具でしかなくなった。主人公を取り巻く魅力的なキャラクター設定と比較して、犯人たちは常にステレオタイプで、同情の余地がなかった。
ドラマの話をしたいわけでなく、現実の世界でも罪を犯す人間像がステレオタイプ化して、ある意味陳腐になっているのだと思う。
腐った林檎は、排除するしかない。
放置すれば箱の中のすべての林檎は腐ってしまう。
いや、これは林檎という果物の話。
あくまで、あの甘い果実の話。
楽園の甘い香り・・・。
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