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2007年8月15日 (水)

【秋庭系東京地下物語'07《隠蔽》】(第1話)隠されたル・コルビュジエ「輝く都市」の秘密・前編

Sn380023ル・コルビュジエという建築家をご存じだろうか。

「建築界の巨人」「近代建築の始祖」「20世紀最大の建築家」

・・・様々な呼称で賞賛される彼は、今年で生誕120年を迎える。

そして、偉大な呼称の影で彼はある陰謀論に巻き込まれることになる。それは、このブログでもお馴染み、地下の都市伝説の権威・秋庭俊先生が著した『帝都東京・隠された地下網の秘密2 地下の誕生から「1−8計画」まで』(新潮文庫)の中でのことである。

ル・コルビュジエは、わが国でも広く知られているが、この地下計画については、あまり知られていない。知られていないのも、あるいは、当然のことかもしれない。実は、この作品をまとめた本である『輝く都市』には邦訳がない。コルビュジエのほかの主要著書はすべてそろっているものの、この代表作だけは私たちには読めないのである。(P161)

秋庭先生によると、コルビュジエの都市計画「輝く都市」は、パリの地下道群の下をB2とした地下計画だったというのだ。そして、それは中村順平によって関東大震災後の東京の復興都市計画にも応用され、内田祥三が「大同の都市計画」として実現しようとした、というのが秋庭先生のストーリーである。

ル・コルビュジエの「輝く都市」、中村順平の「東京近郊」、後藤新平の帝都復興・・・3人を結ぶ地下の「陰謀」が、今明らかになる。

3人の秘密を隠蔽したのは、いったい誰なのか?

第1話は、ル・コルビュジエの『輝く都市』に迫る。

いま、わが国で『輝く都市』とされている本は、別の本の内容にすり替わっている。そんな信じられないようなことが実際に起こっていて、建築家の東秀紀氏がすでに著書で指摘している。そのすり替わった本は、同じコルビュジエの『都市計画の方法』というもので、これには地下計画は出てこない。(P161)

現代のダークサイドの一つがここにある。ほとんど、公然となっている異常事態である。この話を聞いて以来、私は、ある種の茫然自失に陥っている。一刻も早く、巨匠の代表作が出版されることを願っている。(P161-162)

『輝く都市』は、本当に地下の計画なのであろうか。

実際に見に行った。

目指すは六本木ヒルズ森タワーの最上階、森美術館で開催されている「ル・コルビュジエ展 建築とアート、その創造の軌跡」である。秋庭先生に現代のダークサイドとまで言わしめた「輝く都市」がそんなに簡単に見られるものなのだろうか?

チケット売り場で1500円のチケットを購入し、高速エレベーターで53階へ。

ここからエスカレーターで1フロア上がった場所が森美術館である。緊張の面持ちで美術館に潜入する。

ル・コルビュジエは、多くの絵画や彫刻を生み出した画家でもある。パリのアトリエを実寸大で再現した空間。ル・コルビュジエの代表的な建築の紹介。

そして、ついに「輝く都市」である。

会場内は撮影禁止でお見せできないのが残念だが、確かにあった。現代のダークサイド「輝く都市」が、どういうわけか堂々と出品されている。もちろん日本語で解説もつけられている。

さすがに興奮する。地下計画は?B2は?B3は?

まず、結論から述べよう。

「輝く都市」は、パリの計画ではない。

この作品の中心となったのは、凱旋門でもなければ、エッフェル塔でもなかった。地上二階、地下三階のコンクリートの建物、地下鉄の駅がその中心にあった。(P160)

「輝く都市」の中心には、住居がある。パリではないので、凱旋門もエッフェル塔もない。

1930年、ル・コルビュジエは、ソビエト連邦の首都・モスクワで、ソビエト首都改造に関する質問状を当局から受け取った。彼は、それに対する回答として、「300万人のための現代都市」を応用した一連の図面を提出し、それを「輝く都市」と名付けた。「輝く都市」は1930年代に雑誌で発表され、1935年に『輝く都市』と題する本としてまとめられ出版されている。

展示されている「輝く都市」の平面図は、縦に長い長方形だった。

上部には業務地域があり、そのすぐ下に円形の駅複合施設がある。居住地域は、商業・公共施設が集まる中心軸の両側にある。下部には工業地域がある。

秋庭先生が大好きな地下鉄ルートのモデル図もある。長方形の真ん中を直線で貫くルートは、業務地域、商業・公共施設が集まる中心地、工業地域を結ぶ。中心地からは横にもルートが延びて、十字になっている。これが近郊都市とを結ぶ地下鉄なのだろう。さらにこの縦のルートの各駅からは蝶々のように横に8文字に伸びたルートが3つ広がっている。

そして、何より特筆すべき特徴は、この「輝く都市」が“防空的”である、ということなのだ。

敵軍の集中砲火のさなか、地下鉄は高速移動と大量輸送を可能にする。一触即発のバルカン情勢が首都の地下化を加速していた。(P158)

秋庭先生の言葉通りなら、「輝く都市」は、地下網を築き上げることで空襲に備えているはずだ。

ところが、ル・コルビュジエはまったく逆で、地上の建築を使って、戦時下の空襲に強い都市計画を構想したのだ。「輝く都市」では所々にある水泳プールの水が消火活動を助け、分散配置された建築パターンが集中的な被害を減少させる。建物は「ピロティ」によって地上部より持ち上げられているので、有毒ガスが風で拡散される。建物の居住者は、地下の防空壕ではなく上部へと避難する。集合住宅の屋上には「信頼のおける爆弾防御用の金属板」があり、直撃の危険を和らげる。

「ピロティ」が何かについては、次回に取り上げたい。

当時は第一次世界大戦の時代。今の常識からは少しずれていると思う。

でも、彼が、空襲の対策として、決して地下を想定しておらず、むしろ有毒ガスから逃れるために上に逃げるように都市を想定していたことが分かる。

どうも違う。

秋庭先生が著作の中で紹介している「輝く都市」と、実際にこの目で見た「輝く都市」は、まったく重ならない。

オイラは、『帝都東京・隠された地下網の秘密2』(新潮文庫)をもう一度読み直して見て、あることに気づいた。

158ページと159ページにわたるコルビュジエのスケッチは、「輝く都市」ではなく、「300万人のための現代都市」である。秋庭先生が著作で「輝く都市」として紹介しているものは、実は「300万人の現代都市」なのである。

1935年出版の「輝く都市」は確かに邦訳されていない。日本で出版されている『輝く都市』は確かに原題が『都市計画の方法』で、「輝く都市」の理念を解説した著作である。でも、ル・コルビュジエが描いた「輝く都市」の図面は、かなり多くの日本語の出版物で普通に掲載され、紹介されている。だからこそ、森美術館の「ル・コルビュジエ展」でも大々的に出展されているのである。

オイラは、1935年に出版された『輝く都市』の実物を見ようと、国立国会図書館に足を運んだ。

『THE RADIANT CITY』・・・「輝く都市」の英訳版である。オイラは英語には精通していないが、もともと図面の多い冊子なので英語が不得手でも内容はだいたい理解できる。

地下網の話など、どこにもない。

オイラは、再度『隠された地下網の秘密2』の参考文献一覧を見た。「別の本の内容にすり替わっている」(P161)方の日本語版『輝く都市』は記載されているが、1935年出版の『輝く都市』がない。実際、この著作には、「輝く都市」の図面も内容も書かれていない。

秋庭先生はテレビ局時代に海外の取材も経験された人物である。まさか英語を読めないなんてことはないだろう。百歩譲って読めないとしても、「輝く都市」の一連の図面が「ダークサイド」でも何でもなく、あちこちの出版物に紹介されていることくらい、ご存知なのではないか。秋庭本の仮説の大前提になっていて、章のタイトルに「輝く東京」とまでうっておいて、まさか本物にまったく触れずにいたわけでもあるまい。

もしかして・・・

隠したのは、隠蔽したのは・・・

秋庭先生だったのではないか?

「邦訳がすり替わっている」「専門家を特定すると迷惑をかける」と意味ありげなことを書いて、知識のない読者から「輝く都市」を遠ざけ、知ることをあきらめさせる。もしも実物を見てしまったら、地下網とは何の関係もないと分かってしまう。だから参考文献にも掲載しない。図面も掲載しない。あれほど盗用大好きな秋庭先生なのに・・・。

つまり、結論は単純である。

秋庭先生は、『帝都東京・隠された地下網の秘密2』で、「輝く都市」と「300万人のための現代都市」をすり替えているのだ。

 

では、「300万人のための現代都市」とは何だったのか。

次回は、秋庭先生が「輝く都市」とすり替えた「300万人のための現代都市」に迫る。

(つづく)

【秋庭系東京地下物語'07《隠蔽》】

(第1話)隠されたル・コルビュジエ「輝く都市」の秘密・前編

(第2話)隠されたル・コルビュジエ「輝く都市」の秘密・後編

(第3話)隠された中村順平「東京近郊」の秘密・前編

(第4話)隠された中村順平「東京近郊」の秘密・後編

(第5話)隠された内田祥三「大同の都市計画」の秘密

(第6話)隠された後藤新平「帝都復興」の秘密・その1

(第7話)隠された後藤新平「帝都復興」の秘密・その2

                   ・・・(補足

(最終話)隠された後藤新平「帝都復興」の秘密・その3

(関連サイト)

森美術館

(関連書籍)

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コメント

文庫版で、「輝く都市」と書かれている部分
「帝都東京・隠された地下網の秘密[2]」単行本では、
全部、「輝くパリ」と書かれていました。
一応コルビュジエの著作、作品の原題洗って、主題にも副題にも「輝くパリ」が無いことを確認しました、ヴェトナム駐在経験のある秋庭さんほどにはフランス語解りませんけど(笑
ここの
http://happytown.orahoo.com/619metro/html/H002200603092344103cbee0e3e.html
>>666(陸壱玖)、>>669 670(他の方の見解)
辺りに当時確認に苦労させられた記録が有ります。
余談ですが、ボワザン兄弟と親交の有ったコルビュジェは1920年代初めには、近々に飛行機は垂直離着陸するものと吹き込まれていた節があります。(半妄
また、中村順平の時代には、民間航空では、滑走路、誘導路などが確立しておらず、建築家は広い草っ原(整地や押均はされている)に航空機は縦横無尽に離着陸するとの認識を持っていたと思われる節があります。(微妄
だから、秋庭さん流には「巨大な」飛行場も実際にはそれほどに都市計画図的には、大きくはないんだと思われます。

投稿: 陸壱玖 | 2007年8月16日 (木) 00時08分

おはようございます。

コルビュジエ自身が、これからの飛行機は垂直に発着するって書いていますよね。あの60階建ての摩天楼に挟まれた場所にプロペラの飛行機が下りようとしたらビル風で飛ばされちゃうよって思うのですが、そこはやはり、時代が時代なのでしょう。それは建物の上に頑丈な板をのせて空襲から身を守るって発想も同じですね。

それにしても今回は、オイラにとってまったくの専門外なので苦労しております(汗)暖かく見守ってあげてくださいまし(笑)

投稿: mori-chi | 2007年8月16日 (木) 06時47分

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