縦横無尽に妄想を張り巡らせるオカルト作家・秋庭俊先生が「法律違反」を覚悟して書き留めた命がけの著書『新説東京地下要塞』文庫版を解読していたけど、そろそろ飽きてきた(笑)第6回。今回は、「第六章 天下を掌握したのは誰か」を検証する。
てかね、皆さん、この章ってちゃんと読んだ?
さらっと読み流したでしょ。
そりゃそうだ、さっぱりつまんないし、何のことやらさっぱり理解できない。突然、京成線のルートを曲げずに伸ばしてみたり、地下の上水を電車を走らせたり・・普通に読んでいたら首を傾げてしまうよね。リアリティのかけらもない。
この章では様々な飛躍が起きる。
まず最初は、地下に潜った京成線のルートをカーブせずにまっすぐ伸ばしてみる。次に山手線のルートを巣鴨から目白まで直線で引っ張り、都電荒川線と重なるぞと書いてみる。
これ、秋庭先生の地下ルート探索法。直線の地下街路があると思いこんでいるから、いくら矛盾を指摘されても、ここから逃れることができない。
この探索法の起源は、『帝都東京・地下の謎86』(洋泉社)である。
同書の174ページに「カーブする必要はありませんから」というタイトルで、東京メトロのとある人物と会っているという逸話を書いている。
そのトンネルが戦前からあったように思えたら、そのまま真っすぐ一直線に進んで、そこに同じようなトンネルがあるか確かめればいい
秋庭先生は、この方のこの言葉を信じて、地下鉄のルートとルートを定規で結んだりしながら、極秘地下道を探索しているのである。何の取材もせずに。この「カーブする必要はありませんから」の論理と、漢字やローマ字で同じもの同士を結ぶという論理が重なったものが、秋庭式の地下網探索法の神髄なのである。
この話が実話かどうかは疑問だけれど、仮に事実だったと仮定して(そんな仮定はしたくないけど百歩譲って)、秋庭先生は、せっかくの恩師のアドバイスを踏みにじるような仮説の建て方をしている。
秋庭先生の恩師は、トンネルとトンネルを結べと言っている。
京成線の例を見てみようか。トンネルを延ばしてみただけ。その先にあるのは地上の施設である。都電荒川線に至っては、山手線も都電荒川線も地上を走っている。
秋庭先生、この時点で、あなたは恩師の言葉すら曲解して、仮説をねつ造しているのだよ。
もう1つの飛躍は、これ。
鉄道の認可は、通常、起点と終点があるだけで、線路の本数に制限はなく、地上地下の区別もない。路面電車は起点から終点まで道路の上を走るが、線路が敷ければ、一直線の線路を敷いても構わない。一つの認可で道路を走る路線を敷設し、かつ、道路の地下を走る路線を敷いても構わない。(P200)
では、考えてみよう。
現在、東京メトロ副都心線の建設が明治通りの地下で進んでいる。起点は池袋で終点は渋谷である。地上と地下の区別はない。ならば、池袋から渋谷まで地上に一直線の鉄道を敷くこともできるということになる。
途中にはビルもあれば住宅もある。そんなことできるわけないだろって?
大丈夫。「鉄道の認可」は下りている。地下の明治通りにトンネルを掘っているのだから、地上にも線路を敷けるはずだ。しかも、ルートは無限なのだよ。地上に一直線に鉄道を敷いても、それはすでに国土交通省が認可をおろしているのだから、誰も文句は言えない。
土地収用法を活用すればいい。収用法は、事業自体の違法性を問うことはない。いったん事業が認可されれば、池袋から渋谷まで一直線上のルートにある土地はすべて、収用法の手続きさえ踏めば収用可能である。じゃあ、なんで地下に、わざわざ明治通りに沿って鉄道を敷いているんだ?
さて、もうお分かりだろうか。
この仮説、「極秘地下鉄」という前提がないと成立しないのだ。
起点と終点が決まれば、あとはどこを通っても大丈夫、なんて鉄道があったら、世の中大混乱になってしまう。極秘地下鉄ならシールド工法で住民に知らぬ間にトンネルを掘ればいいかもしれない。でも、「地上地下の区別もない」のだから、いったん認可を受ければ、鉄道会社は地上だろうが地下だろうが、縦横無尽に線路を敷くことが可能だ。
たった1つの認可で何万人もの住民が立ち退かなければならないという大変な事態に陥っても、それは、政府が認可したのだからって話になる。
そして、究極の飛躍は、これ。
その地下の上水の水運を、電車に替える際、どんなことが必要かわからないが、西郷は海軍、三菱、皇族間の調整をしていたのだと思う。(P202)
いつの間にか暗渠の上水を電車が走り出してしまう(笑)
ちなみに、上水は川を暗渠にしたものではない。それは秋庭先生の勘違い。地元の区立の博物館とかに行ってみてはいかがだろうか。玉川上水なら、新宿区立の博物館が詳しいと思う。暗渠の上水が石であれ、木造であれ、そのルートは非常に細いものだ。人間どころか、ネズミが走る程度のスケールしかない。
そりゃ、そうだ。玉川上水はたった1本の上水に水が流れている。それが四谷大木戸から先は江戸市中に暗渠のルートを通して分散する。水量は格段に減る。
船が行き交う地下上水が、仮にあったと想定してみよう(そんな想定したくないが)。
何が課題かと言えば、水量の確保である。
それが、今度は電車を走らせるとしてみよう。流れていた水は、いったいどこに行ってしまう?その水で生活していた江戸庶民は、今度はどこから飲料水を確保するのだろうか。
文庫版のあとがきにこんなことが書いてある。
国会議事堂は旧玉川上水、増上寺は渋谷川、サンシャインシティは千川上水の支流にあたる。(P240)
秋庭先生ってよく渋谷川を出すんだよね。
「春の小川」って歌、知ってる?
小学生くらいによく歌ったよね。あれは、かつての渋谷川のことなんだ。「さらさら」流れている。平和な光景だ。その川の地下に極秘地下道?
小川だよ、小川・・・。
その地下に都電が走っていた?
地下の上水を船が行き交っていた?
秋庭先生は、こんなことも書いている。
本書では、皇室には十分に配慮したつもりである。(P238)
これで配慮したつもりなのだろうか。「春の小川」の地下に極秘地下道を敷いた。鉄道の認可が下りたからと、起点と終点を結ぶ一直線のトンネルを掘った。京成線のトンネルを掘るついでに我が家までトンネルを延ばした。さあ、陛下、「交通報国」の精神でトンネルを献上いたします・・・。
こんなアホな話がマジだというなら、皇室を愚弄しているという以外に何だというのだろうか。
(つづく)
伝説のオカルト本『新説東京地下要塞』が文庫化〜著者の秋庭俊先生が「隠された地下網を暴くと逮捕されるぞ!」と読者と関係者を恫喝
【緊急特別企画】秋庭俊先生の『新説東京地下要塞』文庫版を解読する
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