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2007年2月 2日 (金)

【秋庭俊先生応援企画】『帝都東京・隠された地下網の秘密』がトンデモ本って、マジっすか?4

秋庭俊先生の真骨頂は、誰でも入手可能な資料から、「国民に隠された地下網」を探し出すことである。これまで多くの著作で引用された地図や資料、図面の9割以上は、それほどの努力を使わずに目にすることが可能だ。つまり、書いている内容は、「国民に隠されている」が、その根拠としている資料は、ほぼ100%、一般に公表されている資料である。

ここが、秋庭先生のおもしろいところだ。

普通、“米軍が宇宙人の人体実験をしていた”なんて極秘資料は、アメリカが何十年もして公開した資料だったり、関係者から密かに入手したものだったり、資料の左上あたりに丸秘のマークがついていたり、「取り扱い注意」とか書いてあったりするものだ。秋庭先生の場合、そういう類の資料は、おそらく1つもなく、まず間違いなく、市販されている地図だったり、図書館に行けば閲覧できるものだったりする。

なのに、国民に隠された地下道は、「政府の陰謀」だし、それを追おうとすると、公安につけ狙われたりするのである。

例えば、『帝都東京・隠された地下網の秘密』(新潮文庫)の341ページに掲載している「大東京街路網図」は、越沢明氏の『東京の都市計画』から引用されている。この本、赤いカバーでお馴染みの岩波新書である。発行は、1991年だから、まだ新しい。岩波新書なら、ほとんどの書店で手に入れることができる。

住民の移転なしに三倍に広くできるのは、地下道だけではないだろうか。おそらくこのとき全長一三〇キロの地下道がつくられ、「帝都復興」と合わせて全長四〇〇キロに迫ることになった。地上の道路が地下の幅に追いついたのは、オリンピックの時期になると私は思う。(P340)

これだけスゴい仮説を立てる根拠となっているのに、出典は岩波新書である。つくづく「政府」は、お気楽な陰謀を企てたものである。

この本には、たかだか新書のくせに、秋庭先生が見つけた秘密の地下道がたくさん登場する。

例えば、『帝都東京・地下の謎86』(洋泉社)の203ページにある「東京都市計画新宿駅付近広場及び街路の図」(1934年4月18日決定)である。

「広場」から淀橋浄水場へ、「新設街路」というものが延びている。いま、ここには中央通りの地下道、街路四号がある。街路四号の下には、地下鉄大江戸線が走っている。(P202)

205ページに掲載している「東京都市計画新宿駅付近広場及び街路の図」(1933年現在)も、同じ出典だ。

新宿地下計画の詳細図が左にある。「広場」のなかの計画である。いま、地下駐車場が広がっているあたりに、東京高速鉄道、西武高速鉄道という二つの地下鉄が並んでいる。(略)戦前に走っていた地下鉄はいまの銀座線だけで、西武が地下鉄を走らせていたという話はなかったはずである。(P204)

同じように、『新説東京地下要塞』(講談社)でも、同書から図が引用されている。

思い切ったのは、秋庭先生ではなく、むしろ、越沢氏である。岩波新書のように、万人が目に触れる書籍に、国民に隠された地下網が記された秘密文書を掲載しているのである。これが本当なら、公安に狙われるべきなのは、秋庭先生ではなく、越沢氏ということになるのではないだろうか。

『帝都東京・隠された地下網の秘密2』(新潮文庫)では、67ページに、「江戸城内の地層断面想定図」という資料が掲載されている。

千鳥ヶ淵と半蔵濠に矢印がある。お堀の下に広大な地下空間がある。このような空間が内堀をぐるりと囲んでいる。(P65)

すごいことになっている。この図は、『新編千代田区史』から引用している。何と、今度は、千代田区が作成した「千代田区史」が、お堀の地下に国民には隠された広大な地下空間があるという図を、正々堂々と掲載しているのである。区史を編纂するのは、もちろん、区役所の職員だ。皇居を有する千代田区役所の職員が、守秘義務を犯して、極秘の地下空間の存在を知らしめるとは、随分、命知らずな告発を挑んだものである。

同じく、『地下網2』では、105ページに、「高野山東京別院・地下透視図」がある。この図の引用は、東京電力のパンフレットと記されている。

お寺の地下に巨大な変電所があるのは不思議だったが、お寺と電力会社の間で話がついている以上、口をはさむべきではないと思っていた。その後、何人かの先輩ジャーナリストにアドバイスをいただいたことで、それとこれとは別だと教わり、このような透視図を掲載することにした。(P105,106)

言っている意味、分かっただろうか。引用は、東京電力のパンフレットである。パンフレットってのは、広く配るためにある冊子で、極秘の資料ではない。それを本に掲載することに、秋庭先生は何故ためらったのかが理解できない。先輩ジャーナリストに何を相談したんだろうか。おそらく、先輩は、「そんなの、掲載すればいいんじゃないの?」ってアドバイスしてくれたことだろう。オイラも、そう思う。

さて、もうそろそろ、オイラの言いたいことが分かっていただけただろうか。

秋庭先生の著作を読んだ当時、ここで紹介されている様々な資料は、一般市民が簡単には入手できない極秘資料を駆使しているものとばかり思っていた。が、調べてみると、ほとんどの資料を、自分自身が手にすることができた。

秋庭先生の公式サイトの「近況報告」に、こんな記述があった。

この続編では、前回は控えていた資料をいくつか出しています。私は、この程度の資料では差し止めにはならない、なってはならないと思っていますが、見る人が見ると、飛び上がってしまいそうなものも含まれています。というわけで、本文では何も触れてなくても、資料を看破してください。

確かに、この程度の資料では、出版差し止めになることはありえない。戦後の民主主義社会で、掲載された資料が「極秘」という理由で出版を差し止められたことなど、一度もない。だって、岩波新書に掲載してあるんだから。千代田区史に掲載してあるんだから。東京電力のパンフレットに掲載してあるんだから。むしろ、秋庭先生がもっと配慮したほうが良いのは、使う資料の著作権である。

よくテレビの報道特集とかで、匿名の関係者が極秘の文書を明かしていたり、アメリカに飛んで、公開された公文書を探してみたり、そんなハラハラドキドキの展開を目にする。ところが、秋庭先生の著作には、そうした緊張感はほとんどない。著作の中には、東京都公文書館とか国立公文書館に足を運んだという記述があるが、実際に著作で引用されている資料には、公文書館に行かなければ手に入らない資料はないし、記述の内容についても、公文書館で確認すべき資料はほとんどないのではなかろうか。

つまり、

「隠された地下網」は、万人の目にさらされている。

地下道は極秘だが、出典は広く公開されている。

では、次はいよいよ、「秋庭式地下網探索法」を実際に体験してみよう。

(つづく)

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コメント

“MAKING UP A MAP OF TOKYO UNDERGROUND”

応援 陸壱玖

投稿: 陸壱玖 | 2007年2月 2日 (金) 22時22分

あ…ありがとうございます(^_^;)

投稿: mori-chi | 2007年2月 3日 (土) 10時54分

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