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2007年2月 1日 (木)

【秋庭俊先生応援企画】『帝都東京・隠された地下網の秘密』がトンデモ本って、マジっすか?3

秋庭本の最大の特徴は、「国民に隠された地下道」の存在を証明するのに、非常に小さな証拠をたった1つだけしか提示しないということだ。そのために、たった1つの証拠が崩れてしまうと、地下道そのものは秋庭先生の妄想でしかなく、まさに幻の地下道となる。悲しいことに、その幻の地下道の存在をベースにして、次の仮説を立てているから、本の導入部分でこけると、最後までこけっぱなしという悲惨な事態になるわけだ。

『大東京の地下の謎99』では、「61 東大の敷地内にある地下鉄出入り口の謎」という項目がある。

東京メトロ南北線の東大前駅は、改札口から出入り口まで300メートルもの地下道が続いているから、大変不便だ、という内容である。この駅を降りたことのある人は分かるだろうが、300メートルもの長さの地下道は、この駅にはない。とてもオーソドックスな駅である。おそらく、東大前駅を「不便」と言ってしまったら、東京のほとんどの駅はかなり不便な駅で、すべての駅の通路は戦前からあったという話になってしまうだろう。

ここを読んでも、さっぱり謎の気配がしないのは、300メートルという数字がデタラメだからではない。

今回もやはり、『帝都東京・地下の謎86』を引用してみよう。「12◆東大のなかの地下鉄出入口」という章である。

改札前に階段ができることが住民の希望だが、この駅には大きな仕掛けがあるらしく、期待はできそうにない。この本ではとても説明しきれないから結論だけ述べると、仕掛けというのは地下の道路である。(P36)

この本では、300メートルという距離だけでなく、上記のような仮説が立ててある。この次の章「13◆目に見えない道路」では、この東大前駅のすぐ上あたりを、国民に隠された地下道、環状3号線が走っているという仮説へと至っている。

『99の謎』では、この駅の上にある環状3号線が、すっぽりと抜け落ちているから、何が謎なのかさっぱり分からなくなり、300メートルというデタラメな数字だけが、東大前駅の謎として提示されているわけだ。つまり、地下通路が長いという以上には、この駅の謎なんてどこにもないし、長くないことが分かってしまうと、むしろ謎なのは、秋庭先生のメガネの度数か、歩幅の短さくらいしか思いつかないのである。

目に見えない道路は、どこに消えてしまったのだろうか?

秋庭先生は、環状3号線が国民に隠された地下道などでなないことに、おそらく気づいてしまったのだろう。取材の成果なのか、誰かに教えてもらったのか、どこやらのブログを読んでしまったのか、それは分からない。環状3号線が国民に隠された地下道だという仮説を、秋庭先生は、『道路現況調書』を唯一の証拠としていたが、この調書で使った秋庭先生の資料が、そこに道路があるかどうかとは関係ないことはすでにこのブログでも述べてきたことだ。

唯一の証拠が消えてしまったからには、「国民には知られていない環状3号線」も消えてしまう。すると、東大前駅の改札前に階段が設けられない理由も消える。でも、この章を消すと、謎は98になってしまう。300メートルは間違っているかもしれないが、この数字を変えるわけにはいかなかったのだろう。

『99の謎』から、もう1つ例をあげると、「94 大江戸線の原点は海のなかを走る道路だった?」がある。

明治時代の「市区改正」の計画図に、海の中を走る道路が示されていて、これは当時の政府がシールド式の掘削機を持っていた証拠で、従って、市区改正計画は、地下の計画なのだという仮説である。

が、この項目でも、秋庭先生は、へんてこりんな修正を加えていた。

これは最終案の少し手前の素案で当時は公にされていないので、修正された可能性はある。(P222)

たった数行で、自分の仮説の信憑性を否定しているのだ。「最終案の少し手前の素案」というのもアバウトな表現だが、「当時は公にされていないので、修正された可能性はある」というのも、何を言い訳にしているのか意味不明なのだ。ただ、秋庭先生は、この短い文章で、自分の仮説は間違っているかもしれないよと、さじを投げていることだけは確かである。

『帝都東京・隠された地下網の秘密2』では、かなり自信を持って、この海の中の道路があると断言し、市区改正計画は地下の計画と断定している。

つまり、「市区改正」は初めから地上の計画ではなかった。この図は当時の内部資料、国民には、隠されていたものである。日本建築学会が、戦後、公開に踏み切った。この海の中の道路は、佃島砲台と越中島砲台を結んでいる。(新潮文庫P129)

ちなみに、この計画図を公開したのは、日本建築学会ではない。何故彼がそう書いたかというと、秋庭先生は、日本建築学会が編集した『近代日本建築学発達史』を読んで、この中に引用された図を、自著でも使用しているからだ。でも、この『発達史』は戦後かなり過ぎてから刊行されたもので、それ以前からこの図は国民に公開されている。しかも、『発達史』に掲載された図よりも、かなり正確で分かりやすく、さらにカラー刷りの大判の図まで市販で手に入れることができる。

で、『99の謎』で、何故秋庭先生が数行の言い訳を加えなければならなかったのか。

おそらく、秋庭先生は、『発達史』の図ではない、原典の市区改正計画を自分の目で見てしまったのだ。そこにはたぶん、この図が最終案ではないことも書いてあるし、さらに、計画図が変遷した様子までが手に取るように分かるはずだ。海の中を走っているように見える道路が、実は埋め立て地になる予定の場所で、海の中を走る必要などなく、従って、地下トンネルを掘る必要もないことを、見つけてしまったのだろう。実際、「海の中の道路」は、最終案では削除されているから、秋庭先生はやはり、否定できない事実にぶつかってしまったと考えるのが自然だろう。

でも、もう、引っ込みがつかない。

『99の謎』では、「市区改正計画は地下の計画」という壮大な仮説は省かれていて、単に多くの地下鉄のルートに一致すると書いているだけである。『発達史』の図はかなりアバウトなので、こんな風に地下鉄ルートに一致するかどうか認識することなどできないと思うのだが、秋庭先生の眼力なのだろうか。いずれにせよ、謎のスケールは小さくなり、おまけに、「修正された可能性はある」と自分で自説の信憑性を疑ってしまっているわけだ。

秋庭先生は、国民に隠された地下網の秘密を自著で暴露し、証明してみせているが、実はその証明はかなり小さなもので、簡単に崩れてしまう信憑性に乏しいものがほとんどなのである。だから、その小さな証拠を1つでも突き崩すと、芋づる式に地下網全体の存在の根拠が音を立てて崩れていくのである。

秋庭先生独特の方法論とは何か?

実は、これを読んでいる皆さんでも簡単に「秋庭式地下網探索法」を体験することができるのである。

(つづく)

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コメント

mori-chiさんこんばんわ。天涯です。「秋庭ネタ」への復帰、おめでとうございます(笑)早速、【秋庭俊先生応援企画】に便乗させていただきました。秋庭説を補強しちゃってます。秋庭さんに「もっときばらんかい!」というエールをこめて。

投稿: 天涯 | 2007年2月 2日 (金) 01時15分

どうもです。秋庭先生にはもっと頑張っていただかないと、全国の地下ネタマニアが泣いてしまいますもんね。これからも、さらなる妄想を広げて、秋庭ワールドを展開していただきたいものですが。応援は果たして届いているのでしょうか(笑)

投稿: mori-chi | 2007年2月 2日 (金) 11時43分

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