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2006年9月 3日 (日)

東京の地下鉄は戦前にすでに作られていたという噂は本当か?21

秋庭俊さんの著作は、意外に売れている。最初に出した地下本は、名前も知らないような出版社だったが、その後有名出版社で文庫化された。最新刊は、天下の講談社である。あちこちのブログを見てみると、かなり多くの読者が、彼の主張を肯定的に捉えているようである。でも、これまでオイラが検証してきたように、彼は、地下鉄や都市計画などについて、認識の誤りが多くあり、信憑性が薄い。

では、何故、彼の著作は、ウケるのか?

そんなことを考えていたら、1995年のオウム真理教をめぐる一連の出来事を思い起こした。あの頃、テレビで、オウムの信者が、「アメリカがサティアンに毒ガスを巻いている」と主張していて、上空を飛行機が飛んでいるのを見て、「あれがそうです!」と指をさして、悲鳴を上げて逃げ回っていた。

あの信者は、マジだったと思う。

が、信者に対して、どんなに「アメリカはそんなことしない」と説得したところで、彼は信じようとしないだろう。理屈の世界ではないからだ。

オウム真理教の幹部は、有名大出身の理系エリートばかりだった。科学を研究対象とする彼らは、なぜオカルトに走ったのか。

『オウム・超常信仰と科学』(日本科学者会議編、清風堂書店)で、立命館大学教授の安齋育郎さんは、「オカルト・超能力を科学する」と題して、こんなことを書いている。

地下鉄サリン事件のあと、マスコミから、「なぜ、あれほどの理系エリートたちが、一見きわめて非理性的と見えるオウム真理教に心寄せ、反社会的な犯罪者にまで身を落として行ったのでしょうか」という質問を受けたという。安齋さんは、これに対して、以下の7つの答えを出すそうだ。

(1)科学的真理は、発見した場所や、発見した人の宗教上の信条などには一切関係なく普遍的である。

(2)課題意識が明確で研究能力の高い研究者ほど、ある種の疎外感を持ちやすい。そのような感情が、若手の理系研究者たちを現状の研究組織から弾き出していく原因となる。

(3)十分な研究時間と1か月100万円近い収入など、オウムが魅力的な研究条件を提示した。

(4)科学と価値の関係の問題に悩んでいた若手の理系エリートが、麻原教祖の価値観の提示-科学者にとっての生きがいの提示-にある種の魅力を感じた。

(5)ヨガ道場が教団と研究者を結ぶ1つの場となった。

(6)オカルト流の科学者は何もオウムの科学者たちに限られず、昔もいたし、今もいるし、これからもいるであろうということを、オウムの事件は我々に示したに過ぎない。→例えば、コナン・ドイルは、医者であるとともに、イギリス心霊主義者協会の会長だった。

(7)研究者たちは、いったんオウムに身を寄せたら最後、簡単には抜けられない教祖絶対体制が支配していた。

オイラたちが生きている社会は、道理が通らない社会である。株で一夜にして億万長者になるかと思えば、罪もないのに突然リストラされてしまう。政治家たちは腐敗し、金持ちだけが得をする。公務員が犯罪を犯す。アメリカが同時多発テロに沈む。そんな先行き不透明で、「正義」のようなものの指標や価値観が分からなくなってしまった現代だからこそ、国民は、みんな「政治家や公務員は、何かを隠しているはずだ」という意識を持っているし、実際、そうだったりする。

では、その悪行や秘密を暴くはずのマスコミやマスメディアはどうかというと、政治家や公務員と結託して、国民にとって知るべき情報を暴くには至っていない。

秋庭さんの著作の根底には、この“社会不信”が根強くあると思う。同時に、“自分は社会からはみ出しているのではないか”という疎外感も強く感じる。

同時に、“自分にしかできない”“自分だけが知っている”という選民思想のようなものも感じる。それは、あの理系エリートたちが、“自分の能力を使って、自分たちが世界を変える”という宗教的意識と似ていると思う。

秋庭さんのような有能なジャーナリストだった人が、何故、信憑性の低いオカルト本を出しているのか。そして、何故それが支持されるのか。その答えは、オウム真理教事件と、社会的背景が同じだと感じている。

存在しない事実をたくさん並べても、真実を暴くことなどできない。

安齋さんは、こう呼びかけている。

不確かな観測事実に基づいて結論を急ぎ、人間の感覚器官は錯誤に陥りやすいものだということを軽視し、体験を絶対化して幻視の世界に迷い込むのではなく、「なぜ」に徹底的にこだわり、「分からないことは調べればいい」という態度を貫くこと-これが「未知との遭遇」にあたっての原則的な態度というべきであろう。

前述の著作では、大阪教育大学教授の秋葉英則さんが、「現代青年の行動様式と価値観」と題して、マスコミの墜落を指摘している。

インチキ占い師を登場させ、前世は何だとか、改名を強要するとか、「地獄に堕ちる」とおどすとか、背後霊のせいだとか、昔からマスメディアは変わっていない。むしろ、最近は、そこに「科学性」の虚飾を与えるときもあり、血液型占いを本気で信じて、恋愛している人も多いのではないか。

秋葉さん(秋庭さんではないよ)は、マスコミの病には2つの側面があると指摘する。

(1)センセーショナリズム(視聴率第一主義)

(2)シニシズム(皮肉癖、あるいは冷笑主義)→「どうせ政治は汚い」と皮肉り、真相に迫ることを避ける。

テレビで流行る「超能力番組」は、センセーショナリズムとシニシズムの悪い組み合わせの構図だと、秋葉さんは言う。

秋庭俊さんの一連の著作は、まさに、センセーショナリズム(戦後も政府は政府専用地下道を構築している)と、シニシズム(誰も真実など語らない)という組み合わせの典型なのだ。

さて、信者に怒られないうちに、お断りをいれておくべきだろう。

オイラは、秋庭俊さんが言うような国民に隠された地下網が、信憑性が薄いと思ってはいるものの、すべてがガセネタだとは思っていない。

最後に、1つだけ、地下ネタを披露していこうか。

『巣鴨プリズン記録写真集』(撮影・編集織田文二、丘書房)

「巣鴨プリズン」とは、現在のサンシャインシティが建つ敷地にかつてあった、戦犯収容所である。ここには、秘密の地下道があったらしい。

この地下道は女区から庁舎西側中庭まで60~70米の長さがある。旧東京拘置所時代、女区に収容した女子刑事被告人が男子刑事被告人に姿を見せず出廷・護送できるよう作られたものである。A級戦犯もこの旧女区に収容され、この地下道を使用した。地下道は中央部に配水管が通っているため5段の階段があり、曲折はないが真っ直ぐではなかった。天井には裸電球が6箇所とり付けられていた。

この地下道が、現在どうなっているのか、他には地下道はなかったかは、ぜひジャーナリスト・秋庭さんに調べてもらってほしい。オイラのほうは、「いろいろ、あるんだよ」とでも言うよりほかない。


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