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2006年8月10日 (木)

東京の地下鉄は戦前にすでに作られていたという噂は本当か?17

皆さんは、すでにサンシャインシティの地下5階へはいらっしゃっただろうか。地下5階は、サンシャインシティの敷地全体には広がっていない。おそらく、「あのビル」の地下部分だけである。そこには、広大な道路があるらしいので、ぜひ愛車をかっ飛ばして、一度走ってきてほしい。体験談をお待ちしている。

オイラのブログは、まだ地下5階に降りるには早そうである。その前に、その上にある変電所について、一言申しておかなければならない。

 その後の取材で、ここにある変電所は豊島変電所と呼ばれていることを知った。発電量は一〇〇万kVAに達するのだという。だが、この変電所の存在は国民には極秘とされていて、東京電力が公表しているリストには、豊島変電所は存在しない。変電所が存在しないから、ここで働く職員もいない。維持費も計上されていない。(略)極秘の理由は変電所にあるのではなく、送電ルートや電力の供給先にあるようだった。(『新説東京地下要塞』秋庭俊著、講談社、P40)

東京電力の50年史を描いた『関東の電気事業と東京電力』という本がある。とにかく重くて太い。本編と資料編に分かれている。このうちの資料編に、変電所の運転開始のリストが掲載されていた。

年月日 名前      認可出力(MVA)

1967.5  江東(超)         750

1971.6  新宿(超)         320

1971.7  城南(超)         300

      (略)

1977.4  豊島(超)        1000

      (略)

1979.4  池上(超)          300

      (略)

2000.11 新豊洲(500kV) 3000

はい。東京電力の公表したリストに掲載されている。働く職員もいるし、維持費も、オイラたちが払う電気料金から計上されている。確かに、この変電所の具体的な場所は、大っぴらには公開されていない。東京にある地下変電所のほとんどは、場所をハッキリとは公開されておらず、その名前からだいたいの場所を想像するだけである。地図は、地上にあるもの、空から見えるものを掲載するのが原則だから、地図上にはこれらの変電所は登場しない。

では、豊島変電所の正体はいかに?

時は、高度経済成長期、1960年代半ばである。

東京は、都市化や過密化が進展し、変電所など電力設備の用地確保が厳しくなっていた。その一方、都心部には業務用電力を中心とする電力需要が急激に増加していた。東京電力は、1967年5月、電力流通設備近代化計画要項を策定し、都内超高圧系統導入構想を立てる。当時すでに、都内には送電線ルートがあったが、経済成長に合わせて送電線を増加させていけば、どんどん送電ルートが増えて複雑になり、管理が大変である。そこで、超高圧の地中送電線ルートを確保しようというのだ。都心にできるだけ近い地点まで、27万5000Vの架空送電線を7ルート建設し、そこから地中化した13のルートにより、都内に導入する構想だった。

東京電力は、1960年代から70年代にかけて、西東京、新宿、城南、江東、新京葉と至る地下超高圧電線の横断ルートと、京北、豊島、池上と至る縦断ルートを建設した。

前述の50年史では、こう書いている。

東京電力が27万5000V地中系統の都内における拠点とした新宿変電所と城南変電所は、日本の地下式超高圧変電所のパイオニアであり、71年6月と7月にそれぞれ運転を開始した。このうち、東宮御所近くの青山ビルの地下に建設された城南変電所では、機器収納スペースを縮小するため、ガス絶縁型開閉装置(GIS)が15万4000Vと6万6000Vの側に採用された。

新宿変電所は、地下6階に変圧器があるらしい。

『ニューコンストラクションシリーズ第9巻 地下空間を拓く-地下空間建設技術-』(水谷敏則監修、山海堂)によると、

都市の変電所の一例を東京都にみると、全変電所の4分の1にあたる130箇所が地下変電所となっており、供給の拠点となる超高圧(275000ボルト)変電所のほとんど(11箇所中10箇所)が地下変電所となっている。超高圧変電所は収容する変電機器が大型で、重量物であることから、地下に設置し、地上を公園や緑地帯とし、一部地下階を図書館や制御室に使用している。特殊な例として用地不足から寺院の建設に際し、地下に変電所施設を、地上に寺院を配置して、地域の供給効率と都市景観を高めた事例もある。

と書いている。

つまり、豊島変電所と同じタイプの超高圧地下変電所は、都内に10箇所もある。そのどれもが、詳しい場所を具体的には公表していないし、地下であるが故に地図にも掲載されていない。なので、豊島変電所だけが特に「極秘」というわけではない。しかも、この地下送電ルートは、港区高輪にある高野山東京別院の地下にある高輪変電所にも通じている。

現在の都内の送電ルートについては、『ニューフロンティア地下空間』(土木学会編、技報堂出版)に掲載された「首都圏における基幹送電系統」が詳しい。

首都圏の電力供給系統は、首都圏を環状に囲むように、50万ボルトや27万5000ボルトの外輪送電線があり、そこから、1960年代から建設された27万5000ボルトを主体とした放射状の送電線により、首都圏の中心に向けて供給されている。このうち23区内のほとんどは、地中送電線を利用している。

これによると、新所沢、南狭山、新座から、豊島に至るルートと、新古河、北東京、京北から、豊島に至るルートがあり、豊島からは、水道橋の東側を回り、高輪や池上、南川崎に向かって縦断しているルートがあるらしい。

以上から分かることは、

豊島変電所は、特定の送電ルートや供給先のためだけに存在している変電所ではないということ、都内にある超高圧地下変電所、計10カ所のうちの1カ所に過ぎず、特別な存在ではないということ、

である。

都心には、これ以外にも、縦横無尽に地下送電線が敷かれているし、今も新たな路線を建設中である。地下変電所が、大っぴらに場所まで明らかになることは、少ない。ただ、完全黙秘というわけではなさそうだ。

ところで、『ニューフロンティア地下空間』には、超高圧地下変電所の構造例が、実際の変電所の図を使って紹介してある。これを見ると、緑あふれる公園の中にある図書館があり、その下には、図書館の地上の敷地をはるかに上回る広さの地下空間が広がっていて、地下が地下変電所となっている。公園の中にある図書館なんて、23区では珍しいのではないだろうか。地図とにらめっこすれば、案外簡単に見つかるかもしれない。

さて、この地下送電線のルートは、どこを通っているのだろうか。ほとんどが道路の下を通っているらしい。その辺りは、その洞道が戦前からあったのかどうかも含めて、秋庭さんに調べてもらってほしい。オイラのほうは、「いろいろ、あるんだよ」とでも言うよりほかない。


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『新説東京地下要塞-隠された巨大地下ネットワークの真実-』を読む

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『写真と地図で読む!帝都東京・地下の秘密』(洋泉社MOOK)を読んでみた。

『大東京の地下99の謎』(秋庭俊著、二見文庫)を読む

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コメント

変電所は「特高」とか「装甲開閉器」「装甲ケーブル」とか、妄想のネタには事欠きませんから、秋庭氏には格好の餌なんでしょうけれど。
基本的には高圧大電流を扱い、かつ配電と言う公共性の極めて高いシステムですので、秋庭氏に焚付けられて地下5階、ましてや機器室内に不法侵入して事故でも起こされた日には・・・。
あまり公表されることが無いと言うことには、テロからの危機管理とかでは無く、そんなリスクの低減という意味では無いかと思うのですが(笑
現代の変電装置がクラッドやキュービクルの様に、パッケージ化や内装化されているとは言え、素人にも、玄人にも無用に立ち入ってもらいたくは無いと、かつての家庭用ユーザーとして秋庭氏を含めた「住民」のために思う次第です。

投稿: 陸壱玖 | 2007年1月15日 (月) 00時32分

きっと、秋庭さんの頭の中は、「疑惑でいっぱい」なんでしょうね。地下5階にたどり着いた勇者たちは、いったい何人いるんでしょうか。悲しいかな、見た瞬間、「外れ」になるわけで、秋庭さんはつくづく罪深い人です。最近、丸ノ内線にホームドアが着いたのも、もしかして、秋庭さんの本を真に受けて「分岐」を探してウロウロする人たちがいるからなのではないかと、思わず妄想してしまいました。

投稿: mori-chi | 2007年1月15日 (月) 23時04分

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