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2006年3月 1日 (水)

東京の地下鉄は戦前にすでに作られていたという噂は本当か4

いい加減しつこいか(笑)

今回取り上げる地下網フリークのバイブルは、教祖・秋庭俊氏の『帝都東京・隠された地下網の秘密2』(洋泉社)である。

「戦前」とは、軍部が日本を支配していた頃のみならず、この本ではついに、江戸時代以前にまで遡ってしまった。とどまることを知らない秋庭ワールド。室町幕府に、太田道灌に、玉川上水と、中世にまでタイムスリップして、隠された地下網を展開している。

この本で興味深かったのは、玉川上水の四谷から皇居までの経路である。玉川上水は、かつて多摩川の羽村堰から始まり、皇居のお堀まで流れていた。羽村から四谷までは、地上を流れているが、四谷から先は地下に潜り、管路を流れて、江戸城のお堀にたどり着く。現在、羽村から新宿までは水が流れているが、新宿から新宿御苑の北側を通って、四谷までは埋め立てられている。さらに、四谷から皇居までの地下の管路は、どこをどう通っているのか、分からないところも多いらしい。

江戸の抜け穴は、おそらく、上水のルートに合致していた。(P48)

玉川上水のルートは、国会議事堂のウラへと延びていた。(P51)

その防空壕の断面図が左にある。地下一五メートルほどのところに、逆U字型のコンクリートがあって、その中に木造二階建の家が建っている。(P52)

これが玉川上水の一九四五(昭和二十)年の現実である。この家が建っているところが、おそらく、以前の地面ということになる。その道幅は一〇メートルもあるだろうか。いま、国会議事堂ウラの道路の下に、何があるのか私は知らない。しかし、ここには、このように、四〇〇年の長きにわたって、国民には隠されてきた地下網がある。(P52)

「おそらく」が2度も出てくる。彼特有の“飛躍”がここで起きている。江戸時代の抜け穴が、玉川上水のルートの下にあったという証拠は、この本をいくら読んでも見あたらない。あるのは、大名屋敷の屋敷境に溝があったという事実が遺跡から判明するだけである。国会議事堂の裏には防空壕があることを示す文書が示されているが、それが玉川上水のルートの下にある抜け穴を使っているのかどうかは、何の証明もされておらず、「おそらく」と書いている通り、秋庭氏の推測である。

残念である。玉川上水の地下ルートをどのようにして掘ったのだろうかと、ずっと考えていたが、上から盛り土すれば掘る必要はない。なるほど、とうなずいた。が、それが、2回の「おそらく」で、一気に国民に隠された地下網まで突っ走ったところで、がっくりと肩を落とした。「真実」が「妄想」に転嫁する瞬間である。

ちなみに、玉川上水の地下ルートは、今どうなっているのだろうか。

現在、玉川上水の新宿御苑沿いのルートを復活させようという動きが、環境省や新宿区などにある。この具体的な検討をするとき、玉川上水が復活した後、その排水を四谷大木戸から先に流す排水先を検討している。環境省と新宿区が設置した検討会の資料によると、検討対象となった排水先は4つある。1つ目は、近隣の合流式下水道。2つ目は、渋谷川。3つ目は、御苑内の池。そして、4つ目は、皇居堀である。つまり、旧玉川上水の管路を利用し、外堀桜田濠まで導水して放流するルートである。

旧玉川上水の地下ルートは、今もある。

だが、このルートを使って、復活した玉川上水の排水を通すには、非常に大きな課題がある。四谷大木戸から桜田濠までの導水管は、「周辺下水道の流入、人孔および管路の堆積・閉塞、損傷・腐食、系統の不明等により修復も困難な状況」だという。このため、排水先としての可能性は極めて低いらしい。

玉川上水の地上ルートとともに、地下ルートも復活すれば、それは少し歴史がよみがえるようで嬉しいが、残念ながら、地下に潜った玉川上水の復活は厳しいようである。ちなみに、旧玉川上水の地下管路がどこを通っているのかは、上記の資料にも示してあるので、興味のある方は、調べてみてはいかがだろうか。

もちろん、国民に隠された地下網なんかにはぶち当たらないので、ご安心くだされ。

さて、例によって、怒られないうちに一言述べておくべきだろう。オイラは、秋庭氏の主張している内容は、数多くの勘違いが含まれているものの、すべてがガセだとは思っていない。

秋庭氏のアプローチには、「根本的な誤りがある」

何が誤りなのかは、ぜひご自分で本を読んで調べていただきたい。真実とは、想像力ではなく、事実を見つめる瞳が導き出すものだと思っている。オイラのほうは「いろいろ、あるんだよ」とでも言うよりほかない。

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東京の地下鉄は戦前にすでに作られていたという噂は本当か?

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『新説東京地下要塞-隠された巨大地下ネットワークの真実-』を読む

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『写真と地図で読む!帝都東京・地下の秘密』(洋泉社MOOK)を読んでみた。

『大東京の地下99の謎』(秋庭俊著、二見文庫)を読む

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